たんぱく質の摂りすぎは腎臓に悪影響を与えるのか?

2018/09/21

栄養素関連

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こんにちは!今日の更新は、「たんぱく質の摂りすぎは腎臓に悪影響を与えるのか?」というテーマです。

このテーマはかなり長い間議論されていますが、未だにはっきりしていません。

しかし、2018年7月に新しくたんぱく質と腎臓に関するシステマティックレビューが出されました。ということで、ちょっと見ていきたいと思います。


腎機能が落ちているとたんぱく質は腎臓へ悪影響を与える

まず第一に知っておいて欲しいのが、腎機能が落ちている場合たんぱく質は腎臓への負荷となるということです。

要因としては、たんぱく質の過剰摂取により腎臓の糸球体でろ過促進するということや、腎機能低下時にたんぱく質の代謝産物が尿毒症物質として蓄積されるということが起こります。

その結果として腎機能低下が促進されるとされ、実際に様々な研究で報告されています。また進行抑制を目的として、慢性腎臓病の食事療法に低たんぱく食療法があります。

日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」にもその内容が記載されています。(CKD=慢性腎臓病)

健常者のたんぱく質摂りすぎは、腎臓に悪影響を与えるのでは?

上記のようなことから、「腎臓が悪くない人でもたんぱく質を摂りすぎれば腎臓に悪影響を与えるのでは?」という疑問は誰もが思いつくはずです。

日本人を対象にした栄養素の基準は、厚生労働省の出している「日本人の食事摂取基準」が詳しいです。日本人の食事摂取基準2015年版のたんぱく質の欄では、

たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした。
このように記載されています。

また、2010年版では上記の文にプラスでこのように書かれていました。

しかし、40 歳以下の健康な成人に 1.9~2.2g/kg 体重/日のたんぱく質を一定期間摂取させると、インスリンの感受性低下、酸・シュウ酸塩・カルシウムの尿排泄増加、糸球体ろ過量の増加、骨吸収の増加、血漿グルタミン濃度の低下などの好ましくない代謝変化が生じることが報告されている。 また、65 歳以上の男性に2g/kg体重/日以上のたんぱく質を摂取させると、血中尿素窒素が10.7mmol/L以上に上昇し、高窒素血症が発症することが報告されている。これらの報告より、成人においては年齢にかかわらず、たんぱく質摂取は2.0g/kg体重/日未満に留めるのが適当である。

2010年版には書かれていた情報が2015年版では削られています。はじめの文にかかれている通り、根拠としては情報が少ないため余計なことは書かないことにしたのでしょう。

このような感じで、たんぱく質の過剰摂取が何かしらの悪影響を与えるのでは?という観点で討論されていますが、あまり明確な答えは見つかっていませんでした。

なぜ明確な答えが得られないのか

明確な答えが見つからないのはなぜか。栄養学が難解な学問であるというのが理由の一つだと思います。

科学的根拠を示す場合、例えば薬では、薬を飲む群と偽薬を飲む群に分け測定することで効果を調べることができます。こういった手法をランダム化比較試験といい、測定者の偏りをなくすためにランダム化、二重盲検化などの手法があります。

たんぱく質でも、「身体に悪影響を及ぼすほどの量を摂取する群」をたくさん用意できれば明確な答えが得られると思います。が、体を悪くする前提での試験になりますので容易には行なえません

あっても期間が短かったり、対象数が少なかったりと問題のある研究が多くなりやすいです。

たんぱく質をたくさん摂っている群を追跡し、将来の疾病の発症率を調べるという手法もあります。(コホート研究)

ただ、栄養学のコホート研究もなかなか困難です。たんぱく質を過剰に摂っている群を追跡しようにも、自己のたんぱく質摂取量を把握しているような人は少なく、専門家に見てもらうにしても深く聞き取らないと推定すらできません。

上記のような理由で有効な研究が少ないため、明確にならないのだと思われます。

新しい研究について

2018年7月に、たんぱく質と腎臓に関するシステマティックレビューが出されました。(原文はこちら

システマティックレビューとは、ランダム化比較試験のような質の高い研究を集め分析を行う、科学的根拠としては最もレベルの高い解析法です。

この論文では、アメリカのたんぱく質推奨量の0.8g/kg体重の2倍程度、1.6-2.0g/kg体重であれば、腎臓への影響が少ないと報告しています。

ただし、それ以上の量を検討するためには、さらなる研究が必要と述べています。

通常の食事では2.0g/kg体重を超えることはあまりありませんが、プロテインを摂取するような人や低炭水化物食を実施する場合で超える事があります。

まとめ

腎機能が正常な人のたんぱく質の過剰摂取については、未だに議論されておりはっきりした結果は出ていません。

が、今回紹介した論文や、過去の論文でも2.0g/kg体重程度であれば影響を与えないとする研究が多く、現在確認されているのはそれぐらいまでという感じです。

それ以上に関しては未知数で、上記の2.0g/kgというのも1年に満たないような短い期間の研究の結果でしかありません。20年、30年と続けていった場合の影響はよくわかりません。

はっきりするような良い研究が待ち望まれます。

自己紹介


とっぽ
高校で調理師科を卒業し、調理師免許を取得。管理栄養士学科を卒業し、管理栄養士免許・栄養教諭一種免許を取得しました。現在は都内某所の施設に勤務しています!どうぞよろしくお願い致します。

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