植物のネバネバ成分がムチンというのは実は間違い【管理栄養士の解説】

2020/08/12

栄養学

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こんにちは!今日の更新は、山芋やオクラに含まれると言われるムチンという物質についての話です。

テレビや雑誌、ネット上で山芋やオクラ、納豆等のネバネバはムチンという物質によるもの、とよく紹介されています。

しかし、実は山芋や納豆のネバネバをムチンというのは誤りです。

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実は植物のネバネバをムチンというのは誤り

ネバネバのある植物性の食品は多数あります。山芋、納豆、オクラ、なめこ、モロヘイヤなど。

このネバネバは一般に体に良いと言われ、胃や腸を保護する等と言われています。このネバネバ成分は、よくムチンと呼称されています。

ムチンという呼称は、テレビや雑誌、ネット上でよく出てくる表記です。山芋や納豆の紹介があれば、よく粘り成分の説明としてムチンという単語が出現します。(ついでに、ムチンは体に良いと紹介されます)

しかし、実は植物性食品のネバネバをムチンと呼称するのは誤りです。

このことは、北里大学理学部の丑田公規教授が、「生物工学」誌(97巻1号)にて執筆した解説にわかりやすく記載されています。

丑田教授の解説では、「ムチン,すなわちmucin(発音はミューシン)と呼ばれている物質群は,図1に示す2種類のO型糖鎖を「多数」含んだ糖タンパク質であると定義されている」としています。
※二種類のO型糖鎖とは、セリン残基またはトレオニン残基のOH基が、単糖または糖鎖の1位のOH基と脱水縮合したもの。詳しくは元の解説より確認を。)

今のところ、こういった構造が確認されているものは、微生物あるいは動物由来です。植物に含まれている粘性物質はムチンではない別の物質であり、構造からもムチンと呼べるものではありません

また、日本食品工業学会の方から連絡を頂きましたが、日本食品工業学会編の食品工業辞典のムチンの記述も2020年7月30日に訂正されています。

(訂正前)
動植物より分泌される粘質物一般をいう。

(訂正後)
動物より分泌される粘質物一般をいう。

ムチンと呼んで何が悪いのか

科学的には植物性のネバネバをムチンと呼ぶのは誤りですが、非常に広く浸透しています。例えば農林水産省のページ。

ホーム>報道・広告>aff最新号>affバックナンバー2011年>11年9月号目次>特集2 食材まるかじり(1)
リンク切れしそうなのでリンクは貼りませんが、「栄養たっぷり!ネバネバ食材で元気に」というタイトルの記事の一文に、こんな記載があります。

ネバネバの正体とは
ネバネバ食材に含まれる「ネバネバ」「ヌルヌル」の素となる粘性物質は、食品ごとにいろいろな種類があって、それぞれが健康の維持に役立つと注目されています。 やまのいも、オクラ、納豆などに含まれるムチンは、ムコ多糖たんぱく質と糖たんぱく質の混合物です。ムコ多糖たんぱく質の「ムコ」はラテン語で「動物の粘液」の意味。細胞と細胞をつなぐ保水力を持ち、胃の粘膜を保護します。

国の広報ページにすら使われている名称です。

そこまで浸透しているなら、植物性のネバネバをムチンと呼称しても良いのでは?とさえ思ってしまいます。

しかし、医食同源という言葉もあるように、日本人は食と健康を結びつけたがる民族です。

実際に食品や野菜のPRや健康番組で、「ねばねば物質のムチンを摂取することで、胃を保護するムチンの補充になる」等と科学的にも誤った健康に関わるうんちくが紹介され広まっています。

誤ったまま世間の常識として根付いてしまうのは良くない事ですし、健康に関わる事だと言うなら情報の正確性は重要で、用語の間違いも認めるべきものではないと思います。

用語や定義というのは科学を理解する上でとても大事です。

食品業界は、用語や定義を曖昧にしてPRに活用することが多々あります。

代表例としては、「免疫力」という用語があります。誰もが知っている言葉だと思います。

緑茶は免疫力を上げる飲料!」これは実際にネット上に記載されていた文面です。

この文章を執筆した方に、「緑茶をどれぐらいの期間、どれぐらいの量を飲んだら、なんの感染症のリスクが何%低減するんですか?」と聞いたら答えられないはずです。

なぜかというと、免疫力というのは医学用語ではないからです。

医学用語として存在しない言葉なので、研究もありません。実際の研究では、もっと細かい指標を用いて研究を行います。

しかし、研究としてなくても、免疫力を使った文章というのは世の中にあふれています。

「免疫力を上げるらしいからそう書いておこう」、「免疫力なんて上がらないかもしれないけどPRのために書いていこう」こんな感じだと思います。

食と健康の情報はそんなレベルの話であふれていて、レベルの低い情報が多い理由の一つとして、用語や定義の曖昧さ、曖昧でも気にしない国民性があると思います。

まとめ

今回の記事では、植物性の粘性物質をムチンと呼称するのは適切ではないということを紹介しました。

しかしネバネバをムチンと呼ぶことは既に広く浸透しており、言葉の意味も時代と共に移り変わっていくものであることから、誰もがそう認識しているならムチンと呼んでも良いのかもしれません。

しかし筆者が危惧しているのは、テキトーなカタカナと効能を書けばそれっぽく見えてしまうこと、そして日本人がそういう情報に弱いことです。

例えば先程書いた「ねばねば物質のムチンを摂取することで、胃を保護するムチンの補充になる」この説明文は誤りですが、これを読んだほとんどの人は誤りとは思わずそういうものなんだと認識するでしょう。

今回の記事を通して、世の中の食と健康の情報には嘘や間違いが多いということを覚えていてもらえると幸いです。

自己紹介


とっぽ
高校で調理師科を卒業し、調理師免許を取得。管理栄養士学科を卒業し、管理栄養士免許・栄養教諭一種免許を取得しました。現在は都内某所の施設に勤務しています!どうぞよろしくお願い致します。

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