
こんにちは!今日の更新は、ランチパックの卵はなぜ常温保存で問題ないのか?というテーマです。
最近このような質問をされました。
「ランチパックの卵はなぜ常温で平気なの?気持ち悪くて食べられない」と。
なるほどたしかに、家で卵サンドイッチを手作りしたら、普通食べるのはその日のうちです。数日放置して食べるというのは衛生面を考えると気が引けます。
しかしランチパックは、平然と常温に置かれ、夏場だろうが店頭で数日間置かれているわけです。
コンビニのサンドイッチなんかは冷蔵コーナーに置かれているのに、何故でしょう。
保存料や添加物のおかげ?だとしたらその安全性は?
そのあたりについて書いていこうと思います。
【目次】
1 食品はなぜ食べられなくなるのか
1,1 腐敗する
1,2 カビが生える
1,3 その他の品質劣化
2 細菌やカビは、いなければ増えない
3 保存料を使っているのでは?
4 日本に根づいた、添加物=悪という風潮
5 添加物は危険なのか?
6 添加物が無ければ本当に安全・安心なのか?
7 まとめ
食品はなぜ食べられなくなるのか
そもそもなぜ、食品は食べられなくなるのか?という問題です。
自宅で作った卵サンドイッチは、その日中に食べたいですし、翌日に持ち越すならせめて冷蔵庫に入れたいところです。
衛生的にもそうするのが良いでしょう。でもいったいなぜ?
食品が食べられなくなる理由は、主に以下の4パターンに分かれます。
腐敗する
まず1に、食品の腐敗です。腐敗とは、食品に付着した細菌の活動により食品が腐ることを言います。
嫌な臭いを発したり、有害な物質が作られたりします。
細菌も生き物なので、生育しやすい環境があります。寒い中、暑い中では細菌は生育しにくく、常温がもっとも増えやすくなります。
カビが生える
次にカビ。カビは、細菌と同じく小さな生物ですが、全く違う生物です。
細菌は単細胞なのに対し、カビは多細胞。生物的にも構造が複雑で、上位の生物です。
細菌はアルコールをさっと吹きかけるぐらいで死滅しますが、カビはそうもいきません。チーズに生えたカビなんか、除去するには表面を切除するしかありません。カビが内部まで浸透していたら、もはや切除もできません。
そんな感じで、食品汚染を考えるとカビのほうが除去しづらく、強靭です。
カビは種類が多く、人の害になるものがあれば、ならないものもあります。
中にはカビが生えてもカビごと食べる食品もあります。ブルーチーズが代表ですね。
カビの中には、発ガン性をもつ毒素(マイコトキシン)を産生する種類もいます。家庭などでカビを生やしてしまった場合、危険なカビの可能性が高いためカビが生えたら食べるのはやめるべきです。
また、パンはカビが生育しやすい食品です。パンの保存を考える場合には、カビ対策を考える必要があります。
その他の品質劣化
細菌やカビが繁殖していないとしても、食品は少しずつ品質が劣化しています。
たとえばおせんべいやポテトチップス。最初はパリっとしていますが、時間がたつと湿気を吸って当初のおいしい食感が失われてしまいます。
乾物や粉末食品は、空気中の湿気を吸って品質が劣化していきますね。
また、野菜や果物などは酵素の働きにより、色が悪くなったり、自身を分解してやわらかくなったりします。
油を多く含む食品は、油の酸化という品質劣化もおきます。油の酸化はイメージがわきづらいかもしれませんが、こんな例です。
揚げ物油は使い回せますが、ずーーーーっと使いまわしていると、重たくなっていき、いやな臭いを発するようになります。食べると、胸焼けのような気持ち悪さを覚えます。
油はカビも細菌も繁殖できないので、べつに微生物が増えたわけではありません。でも品質が劣化しています。これが油の酸化です。
食品が食べられなくなるのは、だいたい上記のどれかに当てはまるはずです。
上記の知識をもとに、ランチパックの卵がなぜ常温で大丈夫なのか考えてみましょう。
細菌やカビは、いなければ増えない
タイトルでほとんど結論が出てしまっていますが、細菌やカビは、いなければ増えません。
どちらも生物なので当たり前のことです。無からいきなり出現することはありません。
衛生的な工場で、細菌やカビの存在しない環境下で作り、無菌に近い状態で封をすれば数日は問題なく日持ちします。
菌やカビが入っていなければ、冷蔵で保存する必要もなくなります。
逆に、菌がたくさん入ったまま常温保存をすれば、食品中で菌が増え食中毒が発生する可能性が十分にあります。
今までランチパックは相当数発売され、常温で保存されて続けていたと思いますが、食中毒事件は発生していません。その結果が、衛生的に管理されている証明とも言えるでしょう。
保存料を使っているのでは?
この手の話に必ずついてくる問題ですが、保存料のような添加物を使って菌が増えないようにしているのでは?と言われる事があります。
ランチパックの裏面を見てみましょう。

日本の食品衛生法上では、食品に使用した添加物はすべて表示しなければなりません。ただし、残存していないものについては免除されます。
虚偽表記をしていれば話は別ですが、裏面に記載されている添加物が食品に残っていると考えて良いでしょう。
長くなりますが、一応すべて解説してみます。
卵フィリング(卵、ドレッシング、その他)
まずは卵フィリング。ランチパックの中身の具材です。卵、ドレッシングは別に良いと思うのですが、その他ってなんだよ、と思います。
食品衛生法上では、複合原材料で材料が3つ以上ある場合、5%未満のものはその他と表示することが許されています。
なので、その他表示をしないとすると、卵、ドレッシング、塩、マヨネーズ(植物油脂、卵黄、酢、砂糖、香辛料、食塩)とこんな感じでしょうか?
複数品数が入るお弁当等では、とてもじゃないけど書ききれないし、消費者からしても見づらくなるのでその他表示が認められています。
小麦粉、マーガリン、食塩、パン酵母、脱脂粉乳、調味料(アミノ酸)
画像の表示順から順番を少し飛ばしているものもあります。一般的にパンによく使われるもので、保存性にはあまり関係なさそうです。なので説明は省きます。
異性化液糖
とうもろこし等の穀物のでんぷんを、分解して果糖やぶどう糖にした糖です。コーラなどの清涼飲料水によく入っています。砂糖より安いので、砂糖のかわりに加工食品でよく利用されます。
増粘剤(加工でんぷん、増粘多糖類)
増粘剤は、食品添加物の一種です。食品に粘りなどを加える添加物です。パンに加えると、グルテン(パンのたんぱく質)が強化され、パンの保水力が上がりふわふわのパンになります。
食味向上のために入れているものですね。
酢酸Na
酢酸ナトリウムは、簡単にいえば酢です。昔から酢酸は菌の繁殖を抑える効果があり利用されていました。
酢酸Naは、複数の働きをもつ添加物で、菌の繁殖を抑えたり、単純に酸味として使うこともできます。
お酢なので安全性も高いですが、入れすぎると酸っぱい臭いがします。
パンに酸っぱい香りを添加する必要はないので、日持ちを向上させるために添加しているのでしょう。
食品衛生上は、日持ち向上剤と呼ばれます。保存料を使うとイメージが悪いので、あえてこちらを使っているのだと思います。
グリシン
グリシンは、アミノ酸の一種です。エビやホタテなんかに多く含まれるアミノ酸です。
不思議なことに、グリシンも菌の生育を抑える効果を持ちます。なぜ菌の生育を抑えるのかは、結構難しい話なので省きます。
アミノ酸なので、我々の体の中にもある物質であり、安全な添加物といえます。
乳化剤・イーストフード
乳化剤は、水と油を混ぜる添加物です。パン生地に使用することでパンの保水性を高めて柔らかさを保つことができます。
乳化剤の代表は卵黄のレシチンです。マヨネーズもそうですが、油と酢を、卵黄の乳化作用で混ぜ合わせることができます。
イーストフードは、イースト菌(パン酵母)の食べ物です。イースト菌がパンを発酵させる手助けをします。
pH調整剤
pHとは、酸性、アルカリ性の度合いを示すものです。それを調整する添加物で、34種類の化学物質(クエン酸など)を使うことができ、一括表示としてpH調整剤と表示することが許可されています。
酢酸と同じような感じで、これも使いすぎると味に影響を及ぼします。
カロテノイド色素
動植物に存在する天然色素の一つです。着色料として使用されています。
V.C
ビタミンCのことです。ビタミンCは一般的には、たんに栄養補助の目的か、酸化を防止する能力があるので酸化防止剤として添加されます。
パンの場合はこれらの目的ではないそうです。調べていて初めて知りましたが、製パンに添加することで弾性の高い良いパン生地を作ることができるそう。
長くなりましたが、酢酸Na、pH調整剤、グリシンあたりは日持ちを向上させるために添加されています。
これらの添加物の働きにより、微量の菌やカビが付着していたとしても、増殖しづらくなっています。
食品衛生法上は保存料ではありませんが、消費者の方からすれば実質保存料と同じようなものでしょう。
すると気になるのが、保存料を添加していて大丈夫なのか?という疑問です。
日本に根づいた、添加物=悪という風潮
食品メーカーのキャッチコピーの中には、「安心・安全のために無添加にこだわった」「安全な無添加食品」「当商品は保存料を使用していません。」などと表記しているところが多く見られます。
これはつまり、「添加物が多いと危険、保存料が多いと安心できない、消費者の皆さんはそう思っているんですよね?」という意味合いです。
こういった表記があふれていて、さらにメディアの添加物バッシングなども合わさり、日本では添加物=悪という風潮が形成されています。
添加物=悪という内容の書籍も多数販売されていて、一定の支持を受けています。
添加物は危険なのか?
添加物=悪とする書籍や、メディア記事などをいくつか読みましたが、残念ながら科学とは程遠い論理展開がなされています。
そもそも日本で使用が認められた添加物は、動物実験で毒性を試験し、科学的に安全が確認されたものを、安全な量でしか使用できないことになっています。
なので、科学的には、添加物=安全なのです。上記の酢酸NaやpH調整剤、グリシンなども、科学的には安全なのです。
添加物=悪とするためには、科学的に安全性が実証されている以上、科学的ではない論理に頼るしかありません。
科学的ではない論理とはつまり、精神論、無茶な論理展開、飛躍した論理展開などです。
添加物=悪とする論理の一部を紹介しましょう。
パターン1 量の問題を無視する
例えば上記のグリシンというアミノ酸。ラットに大量に投与したところ、死亡したという実験があります。
このことから、グリシンは危険だ、という意見が少なからずネット上に存在します。
こういったパターンは非常に多く、添加物の発がん性も、大量に投与した結果発がん性を発揮した、ということで危険を訴える意見があります。
しかし、これは飛躍した理論展開です。もしこの理論が通るなら、身近なものはほとんど口にできません。
2000年ごろに、醤油を1L飲んで死亡したという女性の報告がありました。
大量に摂取すると死に至るということは劇薬です。つまり、醤油は危険ということです。
アルコールも、純度100%のアルコールを1Lも飲めば、間違いなくすべての人が死に至るでしょう。
アルコールも危険ですから、飲むべきではありません。
身近なものに例えると、かなり違和感があるでしょう。「いやいや、そんな飲めばそりゃそうなるよ」と。
でも、このような論理が添加物では当然のようにまかり通っていて、添加物=悪とする書籍は理由をこのような論理に頼っています。
パターン2 仮定や憶測で話す
構成される論理が仮定や憶測でしかない、というのもよくあります。
たとえば、こういった説明。「それぞれの食品の保存料は基準値以下だが、複数の食品が合わさった場合基準値を上回って毒性を示す可能性がある」
実際には、添加物の安全性の試験は、複数の食品から摂取することを前提に試験されていて、いろいろな食品から添加物を摂っても超えることはまずありません。
一見たしかに・・・、と思えなくもないので、騙されやすいです。
ほかにも、「今のところ安全性が確認されていても、長期的には危険かもしれない」
こういう意見は言いたいことはわかるのですが、この理論でいくと世の中に安全なものはほとんどありません。
水道水に入っている塩素も長期的には危険かも?お風呂はミネラルウォーターで沸かすべきかもしれませんね。
また、このような例もあります。「ソルビン酸カリウム(保存料)をラットの皮下に注射した結果、がんが発生したという報告がある」
こういう記載は実際に見たことがありますが、皮下に注射して結果が悪かったから危ないというのは意味不明です。口から食べるものは、口から食べた時の毒性試験で評価しなければ意味がありません。
醤油を皮下に注射すれば激痛が走るだろうし、ずいぶんな刺激ですから発がん性もあると思いますが、だからって危険と言えますかね?
パターン3 化学合成されたから危険
日本には(海外でも?)天然信仰というか、天然のものは良い、化学的なものは悪い、という風潮があります。
例えば天然着色料と、合成着色料、どちらが安全に見えるでしょう?
おそらく多くの方が、天然着色料のほうが安全そうだ、と思うでしょう。
しかし実際には、天然着色料だから安全というわけではありません。
例えば、アカネ科の植物である、セイヨウアカネの根から得られるアカネ色素という天然着色料があります。
これは長らく日本で使われていましたが、平成16年に発がん性が認められ、添加物としての使用が禁止されました。
どうしてしばらく使っていたかというと、「天然で使用実績があったから」です。
そういった添加物を既存添加物と呼びますが、日本の伝統などから習慣的に使われていたものは、使用を継続しながら安全性の評価を続けていました。
つまり、天然だとか、化学合成だとか、危険性とは全く関係ありません。
天然だろうが化学合成で生まれた物質だろうが、危険なものは危険だし、安全なものは安全なわけです。
しかし、添加物はほとんどが天然のものではないから危ない、というのが一般の方の認識だと思います。
添加物が無ければ本当に安全・安心なのか?
「色々書いてあるけど、結局使っているよりは使ってないほうがいいんじゃないの?」という意見もあると思います。
ごもっともだと思います。仮に、安全性がしっかり確認されているとしても、間違いもあるかもしれないし念のため使っていないほうが良いのでは、と。
しかし私は、上記のような酢酸NaやpH調整剤、グリシンのような日持ち向上剤が入っているパンと、入っていないパン、スーパーに2つが並んでいたら、日持ち向上剤が入っているほうを選びます。
なぜかというと、微生物が毒を産生する場合があるからです。
とくにカビは、自然界の中でもトップクラスに発がん性の高い、マイコトキシンという毒を生成します。
大量に摂取すればもちろん死にますが、微量でも発がん性がある毒です。
梅雨の時期など、パンにカビが生えてしまうことがあります。気づいて捨てていれば良いですが、裏面に小さいコロニーができていた等、気づかず食べてしまっている可能性もあります。
日本では天然信仰が強すぎて、パンにカビが生えても「保存料が入っていない証明だから安心だね」と言って削って食べるような人もいるようです。
実際には目に見えるカビを削っても、中まで浸透していたり、見えていなくても顕微鏡レベルではカビがびっしり生えていたりします。カビが生えればカビ毒がある可能性があるわけですからぜんぜん安心じゃないわけです。
そんな事態になるよりは、適切な使用なら添加物で安全にしたほうが良いと思います。
まとめ
長くなりましたが、タイトルの「ランチパックはなぜ常温保存で問題ないのか?」というテーマについては、衛生的な環境でパンを作り、その清潔な状態を維持しながら包装し、またカビが生えにくいように添加物を用いているからです。
「添加物を使っているなら良くないんじゃないの?」と言われるかもしれないので、自分の添加物に対する認識も書いてみました。
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