アルコールは少量なら健康に良いのか?

2020/04/26

栄養学

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アルコールの画像

こんにちは!今日の更新は、アルコールは少量なら健康に良いのか?という話です。

アルコールは少量なら健康に良いという話は度々ありますが、実際のところどうでしょう。

国民に必要な栄養量を、疫学研究から導き出している文書で、日本人の食事摂取基準というものが厚生労働省より公表されています。

そちらの中に、タイトルに関連がある記載があるので、紹介します。


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アルコールは少量なら健康に良い?

度々言われる、少量のアルコールは健康に良いという説ですが、それなりに根拠があってそういう話が出ています。

日本人の食事摂取基準にも記載されています。該当部分を引用してみましょう。

少量のアルコールを習慣的に摂取している集団は飲酒習慣を持たないか、ある一定量以上の摂取習慣を有する集団に比べて、心筋梗塞の発症や死亡 48)や糖尿病の発症 49)が少ないとの報告が存在する。

48) Roerecke M, Rehm J. The cardioprotective association of average alcohol consumption and ischaemic heart disease: a systematic review and meta-analysis. Addiction 2012; 107: 1246─60.
49) Li XH, Yu FF, Zhou YH, et al. Association between alcohol consumption and the risk of incident type 2 diabetes: a systematic review and dose-response meta-analysis. Am J Clin Nutr 2016; 103: 818─29.

これらの報告は、小規模な研究の報告ではなく、様々な論文を統合して解析したものです。科学的根拠の質としては高いといえます。

記載のとおり、少量なら心筋梗塞や糖尿病のリスクを低減するらしい。俗に言うJカーブです。

ということは、少量ならむしろ健康に良いのか?と思いますが、食事摂取基準ではこう続きます。

その一方で、口腔がんを筆頭に、飲酒は数多くの種類の発がんリスクを上昇させることが多くの研究で示されている 50)。

50) Bagnardi V, Rota M, Botteri E, et al. Alcohol consumption and site-specific cancerrisk: a comprehensive dose-response meta-analysis. Br J Cancer 2015; 112: 580─93.

少量の飲酒は心筋梗塞や糖尿病の低減する一方、ガン全般については悪い影響しかなさそうです。

ガンは今の医療技術では完全に克服できるわけではありません。日本の死因の一位も未だにガンです。

少量なら、心筋梗塞や糖尿病のリスクを低減するかもしれない、でもガンに関しては良くない。

健康に良い面と悪い面、どちらもあるというのは食品では当然のことです。

では、総合的に考えて、少量の飲酒は健康に良いのか悪いのか?というと、まさにそれを検討した論文も紹介されています。

また、195 か国のデータを統合したメタ・アナリシスは、飲酒が関連するあらゆる健康障害を総合的に考慮すると、アルコールとして 10 g/日を超えるアルコール摂取は健康障害のリスクであり、また、10 g/日未満であってもそのリスクが下がるわけではないと報告している 51)。また、およそ 60 万人の飲酒者を含む 83 のコホート研究をまとめたメタ・アナリシスでは、総死亡率を低く保つための閾値(上限)を 100 g/週としている 52)。

51) GBD 2016 Alcohol Collaborators. Alcohol use and burden for 195 countries andterritories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study2016. Lancet 2018; 392: 1015─35.
52) Wood AM, Kaptoge S, Butterworth AS, et al. Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599,912 current drinkers in83 prospective studies. Lancet 2018; 391: 1513─23.

飲酒が関連するあらゆる健康障害を考慮すると、10g/日を超えるアルコール摂取は健康障害のリスクであり、10g/日未満でもリスクが下がるわけではないという報告。

また、別の報告では、総死亡率を低く保つための上限を100g/週(14.3g/日)としています

どちらも2018年の報告なので、結構新しい。

厚生労働省の出している健康日本21の中で、適正飲酒の量をアルコール20g/日としていますが、20g/日では十分健康障害のリスクがありそうな感じです。

ちなみに、アルコールの重量の出し方は以下の通り。

摂取量(ml) × 度数または % / 100 × 0.8(比重) = 純アルコール量(g)

これを500mlの5%のビールに当てはめると、
500(ml) × 0.05 × 0.8 = 20(g)となります。

飲まないですむなら飲まないほうが良い

日本人の食事摂取基準のアルコールの項目の締めくくりは、このようになっています。

アルコール(エタノール)は、ヒトにとって必須の栄養素ではないため、食事摂取基準としては、アルコールの過剰摂取による健康障害への注意喚起を行うに留め、指標は算定しないことにした。

日本人の食事摂取基準としては、過剰摂取の健康障害への注意喚起はするが、必須の栄養素ではないため指標は策定しないとのこと。

つまり、飲んで問題になることはあっても、飲まなくても全く問題ないということ。当たり前の話にも見えますけどね。

少量なら健康に良いらしいじゃないか、という飲むための言い訳を打ち砕く形です。

一部の疾患のリスクは低減するのは事実かもしれないが、総合的には健康障害のリスクとなる。

お酒が大好きな人にとっては悲報となりますが、少量であっても、飲まないですむなら飲まないほうが良いと言えそうです。

アルコールの健康障害の大きい部分は、発ガン性なので、人類がガンを克服したらもう少し飲んでもよくなるかもしれませんね。

おまけ

日本人の食事摂取基準策定ワーキンググループ座長でもある佐々木敏先生のコメント。

アルコールはゼロでよい、議論の余地はないとのこと。きびしいね!

自己紹介


とっぽ
高校で調理師科を卒業し、調理師免許を取得。管理栄養士学科を卒業し、管理栄養士免許・栄養教諭一種免許を取得しました。現在は都内某所の施設に勤務しています!どうぞよろしくお願い致します。

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