高尿酸血症とは何か?(2)-分類と治療について-

2016/03/30

栄養学

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前回の記事では高尿酸血症についての語句や症状について書きました。今回は、なぜ尿酸値が高くなってしまうのか、高くなってしまったらどうしたら良いのかという内容を書いていきます。

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尿酸の産生と排泄

本題に入る前に、前回の記事の要点を復習しましょう。

1,尿酸はプリン体の代謝産物である
2,プリン体は、食品から摂取される
3,プリン体は、体内でも合成できる
4,尿酸は、主に尿中から排泄される

体内の尿酸のバランスは、上記にて調節されています。食事からの摂取+体内での合成でプリン体が増えると、それを代謝して尿酸がいっぱいできます。体は体内の状態を一定に保とうとするので、尿酸が増えたら尿からどんどん排泄しようとします。(ただし、尿酸は水に溶けにくく、排泄に限度があります。限度を超えると尿路結石へ。)

また、プリン体は、食事由来のもので10~20%、体内で合成されるもので80~90%と言われています。最近は、食事中のプリン体はそこまで関係ないと言われるようになってきました。とはいえ少なからず影響あるわけで、尿酸値が高い人が、あえて高プリン食を摂る必要は無いでしょう。高プリン食は肉や内臓類の摂取量が多いということです。つまり、肥満等にも間接的に影響します。


なぜ尿酸値が高くなってしまうのか

一体なぜ尿酸が高くなってしまうのか。尿酸値の上昇は、合成と排泄のバランスが崩れた時に起き、以下のように分類されています。

1.尿酸産生過剰型

体内で作られる尿酸が多すぎるため排泄が追いつかず、尿酸値が高くなるタイプ。尿酸産生過剰には、以下のような要因があるとされています。

・肥満
肥満は体内でのプリン体の合成を促進させます。統計でも、肥満と高尿酸血症は正の相関があり、肥満者では減量によって尿酸値が下がる例が少なくありません。

・食べ過ぎ
肥満の原因となる他、プリン体の摂取量が増え、体内のプリン体量が増えます。また統計では、肉や砂糖入りの飲み物、果糖の摂取が多いグループは、高尿酸血症の割合が高かったそうです。

・飲酒
プリン体の含有量に関わらず、アルコール自体が尿酸の産生を増やします。プリン体offだから飲んでも大丈夫!と言われる事もありますが、大丈夫ではありません。

・遺伝
高尿酸血症は、環境因子の影響が大きいですが、遺伝的な要因も少なからずあります。

・性別
女性ホルモンであるエストロゲンには、尿酸排泄を促進する働きがあります。よって、高尿酸血症の患者は男性が大多数で、女性は閉経後に患者数が増えていきます。

・ストレス
一般的に、ストレスも尿酸値を上げると言われています。なぜストレスが尿酸値を上げるかは不明ですが、ストレスによる過食や、飲酒等の生活習慣が原因でしょうか。

・激しい筋運動
負荷の非常に大きい筋トレは、組織破壊に伴うプリン体の放出や、修復に必要なプリン体の補充によって尿酸値を上げる事があります。ただし、適度な運動はむしろ推奨されていて、加減に迷うところです。継続的に筋力トレーニングを行うスポーツ選手等でなければ、あまり気にしなくても良いかもしれません。

2,尿酸排泄低下型

尿酸が体外にうまく排泄できず、尿酸値が高くなるタイプ。尿酸排泄低下型には、以下のような要因があるとされています。

・肥満
肥満は尿酸の産生を増加させるばかりでなく、排泄能も低下させます。機序ちょっと難しいし本題から逸れるので省略。

・飲酒
アルコールも、尿酸産生増加だけではなく、排泄能を低下させます。こちらも機序は省略。

・遺伝
機序は調べても見つかりませんでしたが、排泄低下も遺伝は関わっているようです。

・腎疾患
尿酸はほとんどが腎臓から排泄されているため、腎疾患により排泄能が低下します。

・降圧剤の服用
高血圧等で、降圧剤を処方される事がありますが、降圧剤の種類によって尿酸値を上げるものがあります。

・ストレス
産生増加と同じく、ストレスは排泄低下にも関与していると考えられます。

3,混合型

上記2つが組み合わさったタイプです。両方の要因が関わる、肥満者等で多いようです。

高尿酸血症のガイドラインによると、産生増加型が12%、排泄低下型が60%、混合型が25%、正常型が3%とされています。(正常型とは、産生も排泄も正常だが尿酸値がやや高くなっているもの)


高尿酸値血症と指摘を受けたらどうすれば良いか

健康診断等で高尿酸血症と指摘を受けた時にはどうすれば良いでしょうか。高尿酸血症の数値にも様々であり、7.1mg/dlの方がいれば、8.2mg/dlだったり、10mg/dlを超える方もいるでしょう。等しく言えるのは、まずは内科の受診をお勧めします。

高尿酸値血症の段階では自覚症状が無いため、検査で引っかかっても放置される事があります。ですが、痛風腎は気づかないうちに進行していきますし、痛風発作や尿路結石は発作時に大変な痛みを生じます。自覚症状が無いうちに手を打っておくのが最善かと思います。



高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインより

生活指導から始めるのか、すぐに薬物療法を行うかは、医師が数値や合併症の有無を見ながら判断します。数値が高すぎず、他に合併症も無いようであればとりあえず生活指導で改善を目指すかもしれませんし、合併症が見られたり、数値が悪かったりする場合にはいきなり薬物療法が始まるかもしれません。

「薬を飲み始めるのは嫌だ」ということでしたら、診察時にまずは生活習慣の改善で変わらないか試したい、と相談してみると良いかもしれません。


高尿酸血症改善の生活について

・肥満と過剰飲酒
高尿酸血症で要因が大きい因子は、肥満過剰飲酒です。どちらも、尿酸産生増加、排泄低下にも影響している因子です。

自身が肥満状態にある、アルコールの摂取量が多い場合には、まずはこれを改善します。

肥満にも原因は様々ですが、生活習慣病としての肥満は、不規則な食習慣や、食べ過ぎがよく要因として挙がります。こういった習慣がある場合は、改善する事で尿酸値が低下するかもしれません。

飲酒が多い場合は、それ自体が高尿酸値血症の要因になる上、肥満にも関わってきます。飲酒の多い方は適正飲酒を目指すと良いでしょう。適正飲酒の詳細はこちらへ。適性飲酒の量はどれぐらい?

肥満、過剰な飲酒習慣は、高尿酸血症だけではなく、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の大部分のリスク因子でもあります。高尿酸血症は、他の疾病があるかどうかも重要なので、肥満や過剰飲酒は改善するべきだと思います。

・水分をしっかり摂る
尿量は多ければ多いほど、尿酸の溶ける量が増し排泄が多くなります。また、少ない尿に尿酸を凝縮させていると、尿路結石になってしまう事もあります。そのため、高尿酸血症の方の飲水は2000ml以上が推奨されています。当然ですが、アルコールや糖質の入った清涼飲料水は控えるようにしましょう。

・アルカリ性の食品を摂る
もう一つ、尿中の尿酸溶解量を増やす方法として、尿をアルカリ性に傾けるというものがあります。尿をアルカリ性に傾ける食品は、野菜や海藻、きのこ類です。反対に、肉類等の動物性食品は尿を酸性に傾けます。

尿が酸性に傾くと、尿酸の排泄が減るだけでなく、尿路結石のリスクも上がります。野菜、海藻、きのこ類は、プリン体も少なく、食べ過ぎの防止にも良い食品ですので、高尿酸血症の方は積極的な摂取が進められます。

・高プリン食は避ける
プリン体は、内蔵類で特別多いほか、主菜類(肉や魚)に多く含まれます。先ほど食事からのプリン体の割合は10%~20%程度と少ないという話をしましたが、主菜類を多く摂り過ぎると、肥満や塩分の過剰摂取を招く上、尿を酸性に傾けていきます。

食事のバランスとしては、野菜をしっかりと摂って主菜に偏らないようなバランスにすると良いでしょう。

・適度な有酸素運動を行う
適度な有酸素運動は尿酸値に肥満や高血圧等の合併症にも効果があります。激しい筋トレ等の無酸素運動は、細胞を壊し尿酸値を上げる事があるため、控えるか、医師と相談してみてください。

上記の食事療法等は、状態によっては適さない場合もあります。例えば、腎臓へのダメージが深く、高カリウム血症をきたしている場合では、野菜の摂取が推奨できないかもしれません。そのあたりは、きちんと検査していないとわからないので、やはり受診して体の状況を見てからといった感じです。


まとめ

高尿酸血症の治療の基本方針は、尿酸値を下げるとともに、肥満や高血圧等の併発している疾病の治療です。

メタボリックシンドロームのように、尿酸値も高い、肥満もある、血圧も高い、血糖値も高い、といったような複合した状態が一番リスクが高い状態です。そしてこれらの生活改善方法は、ほとんど共通しているので、まとめて改善していくのが良いでしょう。

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自己紹介


とっぽ
高校で調理師科を卒業し、調理師免許を取得。管理栄養士学科を卒業し、管理栄養士免許・栄養教諭一種免許を取得しました。現在は都内某所の施設に勤務しています!どうぞよろしくお願い致します。

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