卵は一日何個まで?コレステロールの心配は?【科学的根拠に基づく解説】

2019/06/28

栄養学

t f B! P L

こんにちは!今日の更新は、卵は一日何個まで食べても良い?というテーマです

卵はコレステロールが豊富な食品で、一個で250mgぐらいのコステロールを含みます。

そのためか、「卵を食べすぎると血中コレステロールが高くなる」とよく言われます。コレステロールは動脈硬化に関わり、本当だとすると気になるところ。

日本人は卵の摂取量が多い国です。国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、国民一人あたり、一日一個ぐらいの消費量があるようです。

筆者も何らかの形で一日一個ぐらいは卵を食べています。オムライスを作った日なんかには、一日で三個になってしまいます。

ということで、卵は一日何個ぐらいなら食べても良いのか?コレステロールとの関係について書いていこうと思います。


スポンサーリンク

日本人のコレステロール目標量は?

日本人が栄養素をどれぐらい摂れば良いか?というのは、厚生労働省が制定している日本人の食事摂取基準で確認することができます。

日本人の食事摂取基準は5年ごとに改定されており、コレステロールの目標値については2010年版と2015年版で扱いが違います。

2010年版ではコレステロールの目標量として、男性750mg、女性600mgと制定していました。これは、ハワイ在住の日系中年男性(45~68 歳)を対象とした観察研究をもとにした数値です。

一方で2015年版では、コレステロールと動脈硬化症に関連を示さない研究もあるということで、目標量を撤廃しました。

これは、「食事のコレステロールは血中コレステロールと関係ない」ということを言っているわけではないのですが、そのように早とちりしてしまっている方が多数いるようです。

実際に、"卵 一日 何個"というワードでgoogle検索すると、1位と2位のページはそのような事が書かれています。(2019年6月現在)

正確には、2015年版食事摂取基準にもしっかり記載されていますが、「コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠がなかった」というのが正しいです。

また、動脈硬化症疾患予防ガイドラインでは、高LDLコレステロール血症の食事療法について「コレステロールを200mg以下」と記載しています。

卵を食べるとコレステロールは上がる?

卵とコレステロールの関係について、日本人の食事摂取基準の策定にも関わっている、佐々木敏先生の本から研究をまとめた結果について引用します。


「佐々木敏のデータ栄養学のすすめ」39Pより。

こちらは17の研究をまとめた図です。全体としては、卵をたくさん食べればLDLコレステロールが上がるという結果です。

しかし、ばらつきも大きく1~2個ぐらいの間であれば、あまり大きな差が無いとも言える図です。

卵の摂取量と心筋梗塞の発症率について

こちらの図は、卵の摂取量と心筋梗塞発症率との関連についての図です。


「佐々木敏のデータ栄養学のすすめ」42Pより。

こちらは9つの研究をまとめた図です。卵を食べる習慣がなかった人たちを基準に、相対的な発症率を示しています。

この図からは、卵の摂取量と心筋梗塞の発症率との間にあまり関連はなさそうだと読み取れます。

どう結論付けるか?

血中コレステロールが高いと心筋梗塞の発症率が高いという研究が多数あります。

そして卵の摂取量と血清LDLコレステロールの研究をまとめた結果では、卵は1~2個ぐらいならあまり大きな差がないかもしれないが、やはり全体としてはたくさん食べれば血中コレステロールも上がりそうだと示されています。

では、卵をたくさん食べれば心筋梗塞の発症率も上がるのでは?と予想できますが、意外にも研究では関連を示していません。

これはどう考えるか難しいのですが、まず、卵の摂取量と心筋梗塞発症率の関連を調べた研究では、一つの研究を除いて、一日1.5個までしか調べられていません。それ以上食べた場合の研究はほとんど存在しないのです。

研究するには人数が必要です。卵を毎日3個も4個も習慣的に食べている人を見つけるのは、ちょっと難しそうです。

また、この図では卵の摂取量が少ないのに、相対危険が高い点があります。

ここですね。

卵の摂取量が少ないのに高くなってしまっているのは不思議かもしれません。しかし、こういうことは研究ではしばしば見られ、「因果の逆転」と呼ばれます。

今回の例でいうと、心筋梗塞のリスクが高い人(=血清LDLコレステロールの高い人)が、栄養指導などを受けて卵を控えているかもしれない、ということです。

結局卵は一日何個まで食べても良いのか?

卵をたくさん食べれば血中コレステロールは上がるのはたしかですが、1~2個の範囲では研究でもかなりばらつきがあります。

習慣的な卵の摂取量と心筋梗塞の発症率との間にはほとんど関連が見られません。一日あたり1個~1.5個ぐらいならあまり影響はなさそうです。

それ以上の個数に関しては研究もなく、結論は出せませんが、できるだけ控えておくほうが良さそうだと思われます。

結論としては、健康な人は、一日一個ぐらいの卵なら、ほとんど健康に影響を与えないと考えられます。毎日二個以上食べた場合に関しては、研究もほとんどなく、よくわからないです。

よくわからないというのは、私がわからないというだけでなく、世の中の誰もわからないはずです。2個以上食べても大丈夫!というホームページもありますが、何を根拠にしているのか謎です。

また、すでに血中LDLコレステロールが高い人は、動脈硬化症疾患予防ガイドラインに則り、食事からのコレステロールを200mg以下と考えるのが良さそうです。ということは、卵を1日1個食べては多いということですね。


今回の記事を書くにあたって、佐々木敏先生の「データ栄養学のすすめ」から引用させて頂いております。(出典元を明記すれば、中面写真を含めて引用して構わないとのこと)

この本についてのレビューも書いているので、よければ御覧ください。
管理栄養士が自信を持ってオススメする二冊の本

自己紹介


とっぽ
高校で調理師科を卒業し、調理師免許を取得。管理栄養士学科を卒業し、管理栄養士免許・栄養教諭一種免許を取得しました。現在は都内某所の施設に勤務しています!どうぞよろしくお願い致します。

詳細プロフィールはこちら

ブログ アーカイブ

このブログを検索

QooQ